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2008.08.21

感想:映画「スカイクロラ」

皆さん、今晩は。更新が、予告どおり、一ヶ月ぶりぐらいに、なってしまいました。

しかし、忙しいとか言いながら、時間を見つけて、映画は見てきました。以下、スカイクロラの個人的レビューです。

最初に、結論から書かせていただくと、劇場を出る際、「なんじゃこりゃ~」と怒りの叫びをあげたくなるような(実際は叫んでません、念のため(^^;)作品でした。大変残念ながら、私は、違和感と嫌悪感しか感じられず、5点満点で、星1つ(*)の”駄作”という感想しかないです。ここ数年で見たアニメ作品の中でも、最低点を付けざるを得ない内容でした。同時期に見た、カンフーパンダの方が、ずっと面白かった(泣)。

 以下、ネタバレを多分に含みます。また、キツイ感想を書いていますので、読みたくない方は、このへんで、ウィンドウを閉じてやってください。

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●作品の紹介、スタッフ、キャスト
公式HP、および、Wikipediaの情報に譲ります。また、期間限定のはずですが、@niftyにも、専用サイトがあります。

●設定・世界観
 SFだということは十分承知していますが、それにしても凄く違和感があります。仮想戦争に様な行為に励むのは、「宇宙戦艦ヤマモトヨーコ」をはじめ、過去にいくつか実績があったので、この点は、特に、変と思わないのです。
 しかし、第二次大戦末期(特に旧ドイツ軍)を意識したかのような世界と、兵器群は、とても違和感があります。理由は、バイオテクノロジーだけ、異様なまでに発達しているくせに、飛行機だけは、いまだにレシプロ機で、しかも機関砲を打ち合っているだけなんて、到底納得できません。
 (その後の戦法を一変させた、ロケット弾、ジェットエンジン、ミサイル、全部大戦末期に実戦投入されていたのに、全部黙殺とは、なぜでしょう?)。しかも戦法は、まるで第1次大戦のような一騎打ちスタイルで、古い古い!。大戦末期には、ヨーロッパ戦線では、通信とレーダーをふんだんに使った、すでに集団戦だったはずですが...。

●キャラクター
 個性的なキャラクターが揃っているのは良いとして、全員、魅力的とは、言いがたい。

 演出意図であることは十分理解していますが、ことさら強調した2Dアニメ的なデザインも、CGの飛行機との質感との落差が大きく、全く馴染めません。いっそ、ゲームみたいなフルCGキャラクターで、良かったのでは?、と思うのですが、古い監督さんの美学が、それを許さなかったのだろうと理解しています。しかし、個人的には、納得できない。
 さらに主人公が、酒、SEX、ドラッグまみれというのは、納得がいかない。この設定は、輸出を意識して、海外ファンの日本アニメに対する、ステレオタイプ的な期待に応えただけなのかもしれません(いまだに、海外では、Animeをキワモノ扱いする風潮は、残っているらしい、冒頭の空中戦で飛び散る血しぶきも、その期待に応える一環なのかも)。が、しかし、私には、嫌悪感しか感じられない。主人公を語るに、こんな物に頼るしか、本当に方法がなかったのでしょうか?、単に刹那的な主人公を描きたいのなら、他にも方法が、あったと思うのだが...。

(ちなみにドラッグなんて出てきたっけ?、と思った方へ釈明。主人公らが、やたらにタバコを吸っているのを見て、私は、最初、「へへぇ、全員、ヘビー・スモーカーという設定なのね」と思っていたのですが、話の中盤ぐらいから、異様な吸いっぷりに対して、そんな言葉では説明が付かず、裏設定を悟りました。つまり、あのタバコは、大麻タバコのような、何らかの麻薬入りのタバコなのではないかと...。実際、古来からベトナム戦に至るまで、軍隊組織では、しばしば便利な道具として使われてきた、輝かしい実績があります)

●作画
 技術的には、見事です、技術的には。ハイライトの空中戦を含めて、私にとって、本作で見るべきは、ここしかありませんでした。CGを使いながらも、レンズ・シミュレーションや、フィルム・シミュレーションを多用して、古臭い感じを演出しているのは良くわかります。
 しかし、正直、全く感心しないのですよ、私は。劇場用の映画なのに、ことさらフィルムの粒状感を強調したザラザラ絵を、(アクセント的に、ほんの一瞬見せるだけなら、ともかく)延々と観客に見せつけることに、いまさら、一体、何の意味があるのか、極めて疑問です。私はこのあたりの画面で、深いため息をついてしまいました。
 (このあたり、言い方は悪いですが、クリエーターの技術的自己満足を垣間見た気分で、大変、嫌悪感(というか、怒り)を覚えました。今さら、延々とfilm grainのシミュレーションなんてしてみたところで、観客は誰も喜びませんよ)

●演技
 主役のパイロットである優一に、加瀬亮さん。その上官の水素(スイト)の役に、アカデミー・ノミネート女優の菊地凛子さんを配置しているものの、声優としての演技力には、やや不安がありました。が、比較的、淡々と進むストーリーと、少ない台詞回しには、意外にも良く合っているように思いました。個人的には、もっと大根声優ぶりを発揮しているかと思ってましたので、まあ満足です。

●音楽
 川井さんの音楽、悪くないです。よく言えば手堅いのですが、悪く言えば、意外感も無い。特別に、サントラを買いたい気持ちにはなれませんでした。

●ストーリー
 この点は、まったくもって0点。「世界を変えるには、自分から変えていかねば」というのが、本作の主張の核心と理解しましたが、その結果が、主人公の無謀な行動というのは、到底納得できない。無敵のライバルに挑戦するなら、たとえ若者でも、緻密な作戦と慎重な行動は必要だろうに。主人公が知性派でも、熱血漢でもない、どちらかというと無気力なパイロットであるのは分かりますが、果たして他に描く方法はなかったのか?、エンドロール後のラストシーンも見ましたけど、私には、何のカタルシスも感じられません。仮に、もし”輪廻”を語りたいなら、こんな安直に語って欲しくないと、怒りすら感じました。

 一方、ティーチャーと呼ばれた相手側の”無敵のエースパイロット”は、とうとう最後まで正体を現さず、フラストレーションばかりが残りました。そもそも、「無敗のエースパイロット」という設定自体が、不可解。どんな腕利きでも、「100戦全勝・0敗・0引き分け」は、絶対あり得ない。”彼は大人だから勝てない”的なセリフがありましたが、これも不可解。現実には、大人を負かすことは、スポーツの世界ですら良くあるし、弟子が師匠に勝ことも、現実には良くあります。”ティーチャー”というあだ名を聞いた瞬間に、私は子供が最終的に大人を倒す話なのか、とも思いましたが、これも違っていました。
 私は、ティーチャーという人物は、ずっと前に戦死したか、あるいは、戦意高揚のため(または、キルドレを製造するため)に、ねつ造した”元から存在しない架空のパイロット”という設定を想像しました。つまり、存在するのは、ティーチャー機というUAVだけ...そう考えると、冒頭の無慈悲な敵機への撃ちっぷりとか、命知らずの神業のような操縦を繰り返す行動も、確かに説明できますね。

●総合的感想:*(5点満点で)
 本作の宣伝がとても上手なのは、感服いたしますが、この内容は一体...orz(以下省略)。本作に対する印象は、かなり悪い。残念であり、とても腹立たしい。仮に本作が、尺の長さが半分の、実験的なOVA として作られていたなら、これほど腹も立たなかったと思います。

 グダグダ書いた、メカや、タバコのようなモノに対する苦言は、どちらかというと、感想の枝葉であり、核心ではありません。仮にそれら全部に目をつぶっても、星一つの感想は、殆ど変わりません。理由は、どうしても好きになれない/納得のいかない点が2つあります。一つは、上記に書いた結末、もう一つ、本作で、嫌だったのは、年寄りの説教臭さというか、(技術的な話ではなく)センスの古さを、感じてしまったことです。そういう話、私は、昔から嫌いなんですよ。
 これほど印象が悪いなら、最初からビデオ待ちにするべきだったと後悔しています。300円ぐらいのお金なら、この内容でも腹も立たない。満足度という意味でも、本作は同時期に見たカンフー・パンダよりも、ずっと劣ります。(アニメクリエーターの間で評判の悪かったと言われている、アップルシード・エクスマキナよりも、本作に対する個人的な印象は、ずっとずっと下です)

 しかし、救いようのない暗澹たる気分になった、実に後味の悪い一本でした。本作は、海外でも配給されるそうですが、どうなんですかね~、この内容で、興行的な成功を狙うのは、"mission impossible"のような気がするが...う~む。

●最後に

 「パトレイバー2 the movie」、「攻殻機動隊」と、押井さんのことを高く買っていたのだけれど、押井さんの作品を見に、劇場に足を運ぶのは、もはや、これを最後にしたいと思います。

 ”押井さん、さようなら、あなたは90年代をリードした、立派なアニメ監督でした”、合掌( ̄|| ̄)。


 以上

[2008.8.25]
検索エンジン経由で、見て下さっている方が奇妙に多いので、言葉の足りなかったところなどを追加し、内容を再編集いたしました。

[2009.4追記]
 ええと、ずっと前に書いた、この記事、DVDも発売後の今も、なぜか参照参照回数が多くて、恐縮しております。期せずして長文になりましたが、いまだに感想は、上記の通りで、本作に対する、感想は、全く変わりません。
 ちょっと気になっていたので、スカイクロラの興業成績が、結果としてどうだったのかを調べてみると、ワーナーブラザーズの目標収益20億円に対して、わずか7億円少々とか(日経トレンディによる数字)。総予算は、非公開ですが(さんざ調べたけど、出てこない)。

 私の推測では、8億円前後(うち、スタジオの実制作費:2億円前後)と考えています。
(根拠は、惨憺たる成績に終わった押井監督の前作:イノセンスの数字からの推測です。イノセンスは、総制作費:20億円、目標収益:50億円に対して、興業成績:10億円でした。)
 この推測がそう遠くないなら、興行成績としては、五分五分。DVD/BDが、たっぷり売れて、やっと一息、といったところでしょうか。

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Comments

戦争で意識を高揚する方向で使うのであれば覚醒剤が必要ですね。
ダウナーである大麻など使ったら、意識が鈍化して空戦などできなくなってしまうでしょう。
私は単純に、喫煙者が多いだけだと思います。

Posted by: a | 2008.08.24 06:54 PM

 わざわざ、コメント、ありがとうございます。

 ティーチャー機も含めて、このあたりの謎は、原作の方にあるのかも、と最近思っています。
(ちなみに、私は全然、原作を読んでいません)

Posted by: don777 | 2008.08.24 10:09 PM

制作費を探してまさに検索エンジンからきました。
いまさらですけどこうかなーってことを。

世界観の違和感
それが狙いだったりして。監督の趣味はともかく違和感を起こさせる効果は達成!…気持ち悪いの質がそこじゃない気もしますが。

命掛けの殺戮を見世物にする上で先端戦闘機が必要がないのは、人の能力のみで戦わせるためなのです。多分。ねっちりと純粋に身体能力を競わせて死に至らしめるのが肝心で、ハイテク別にいらないという話…かどうかはわたしも読んでないんで知りませんが。

違和感ある空気というのは、冷戦期の東欧映画にある雰囲気を好んで撮るからだと思うんですけど、うまく寓意にならず趣味だけ出して軽ーくなった結果の、ぺらぺら感からでてるのかも。しかしわざと空にしたものを見せるのは芸術でも金を出す娯楽には居丈高すぎるなぁ。監督は映画というより舞台演劇指向の気があるんでしょうね。

Posted by: b | 2009.11.19 06:41 AM

>b様

#多量のスパムコメントの中に埋もれていて、発見・公開が遅れました。深く陳謝いたします。

東欧うんぬんというのは、確かにおっしゃるとおりです。あの人のタルコフスキー好きは、有名ですからねぇ...。
(ちなみに原作は、今もって読んでいません。Mr.押井が、原作に忠実に映像化するとは、到底思えなかったので、読んでも参考にならんだろうという判断からです)

Posted by: don777 | 2010.01.13 11:28 PM

レンタルDVDで見て、冒頭3分で見続けることができず、「なんじゃこりゃー!」と憤懣やるかたない気持ちでネット検索して、こちらに行き当たりました。レンタルで見ても腹が立ったのに、映画館で見た方たちはどんな思いだったのか……。
思っていたことを代弁してもらえてるものを読んで、溜飲が下がりました。ありがとうございました。

Posted by: せい | 2012.05.15 01:53 AM

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